雑記

四十九日ということで、また父方の実家に里帰りしてきました。秋の里帰りは初めてでしたね。
やったことと言えば、お坊さんと一緒にお経を読んだくらいでしょうか。納骨とかは葬式の後に済ませてしまっていたので、実際やったのは読経だけですね。
祖母の家は浄土真宗なので、南無阿弥陀仏が「ナムアミダブツ」ではなくて「ナモアミダブ」でした。独特の調子で読まれるので読んでて楽しかったですね。もちろん真剣に読みましたが。


まぁ四十九日についてはその程度でした。
それはさておき、今回は秋の帰省ということで、自然体験をする機会が多かったです。
秋といえば実りの秋。祖母の家は山奥にあるため、実のなる木がたくさん生えています。クリやらカキやらイチジクやら。食べるものには事欠きません。
そんな中、僕が食べたのはカキとアケビでした。牡蠣とアワビじゃありません。柿とアケビです。
最初に食べたのはアケビでした。手のひらから少しはみ出るか、という程度の大きさをした空豆形の木の実です。外の皮は赤茶色で野暮ったいのですが、爪を立てて皮を割ってみると、中には美しい白い果肉が詰まっています。
Wikipediaより アケビ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%B1%E3%83%93
パッと見たところ果肉が多そうなのですが、実のところほとんどが種。食べる部位は少ないです。
食感はバナナのようでした。味はクセの少ないサトウキビのようで、結構甘かったです。まだ実が割れていない状態でもいで食べたのですが、甘みはそこそこありましたね。


次に食べたのが柿です。
「カキなんてどこでも売ってるし、わざわざ自慢するもんないだろう」と思う方もいるかもしれませんが、僕が食べたのはもぎたてのカキです。しかも、一種類ではありません。
僕が食べたのは、甘柿、渋柿、熟柿の三種類です。
甘柿というのは、ごく一般的に果物屋さんで売られている平べったいやつですね。食べてみた感じですが、甘みはそこまで強くはなく、シャリッという果物らしい爽やかな食感をもっていました。また、およそカキとは思えないほどのみずみずしさをもっていて、あわやリンゴかと間違えそうになるくらい水分豊富でした。
今まで食べてきた柿と比べて果肉がしゃっきりしていて、レモン色の果肉に茶色い繊維の線がいっぱい入っていました。おじさんいわく、その状態が食べごろなんだそうです。
このように、甘柿は良かったんです。だけど、問題は渋柿です。
渋柿は平べったい甘柿と比べて縦に長い形をしています。そして、熟していない渋柿を食べてしまうと大変なことになってしまいます。僕はこの「大変なことになる」の部分を知りませんでした。
学校の先生を目指す以上、体験というのは大切です。バーチャルではない、リアリティに溢れた体験こそが人間を豊かにしてくれます。僕は、「おう、やめとけやめとけw無理じゃろうてww」というおじさんの煽りに負けず、黄色い渋柿にかじりつきました。


…………


ほどよい水気と強い酸味。「なんだ、全然余裕じゃないかw」と思った次の瞬間でした。
口の中いっぱいに広がる強烈な苦味と辛味とエグ味。そして次から次へとあふれ出してくる唾液唾液唾液。それはもう滝のように流れ出てきました。
ぶふぅッッ!!!!
体全体が危険信号を発していました。この食物はイケナイと。ヤバイと。
理屈ではなく、直感でそのことを感じ取った僕は、口に含んだ渋柿を草むらに向かって噴き出しました。果肉を吐き出しても口内には渋柿から放たれた果汁がたっぷりと残っています。
それはまさに口内暴力。いつまでも唾液腺を刺激してくれるおかげで、次から次へと口に唾液が溜まります。しかもその液体がまた苦渋酸っぱいもんだから、吐き出さないとやってられません。
マナーが悪いと思いつつも、我慢できずに唾液を草むらに吐き出しました。泡がまったく含まれない、粘度のすばらしく低い液体が口から流れ落ちました。滝のように。
渋柿のパワーなのか、かじった後しばらくの間、口の中の粘膜をはじめ歯とか舌とかが洗剤で磨いたようにキュッキュッとしてました。非常に気持ち悪かったです。
身をもって体験した渋柿の破壊力。後世にまで伝えていきたいですね。
余談ですが、おじさんから聞いた話。栗の実には渋皮というのがあって、あれも上手に処理しないと渋くてやってられないとのこと。昔の人が「渋」という漢字にこめた思いは相当なもののようです。


最後に食べたのが、熟柿です。「じゅくし」と読みます。「デュクシ」ではないです。
平たくいえば、熟柿とは熟した渋柿のことです。熟していない段階では黄色だった渋柿も、完全に熟したら赤味がかったオレンジ色になり、柔らかく甘くなります。
これももぎたてを丸齧りしてみたのですが、驚きました。全然苦くないんです。それどころかメチャメチャ甘かったです。
果肉はクリームみたいに柔らかく、水気も多かったです。甘柿がごつごつしていたのと比べると、こちらはしっとり。繊維が縦に走っていて、種の周りにはゼラチン質の果肉がくっついていました。
とにかく甘かったです。食感については好みが分かれるかもしれませんが、甘さに関しては文句なしでした、渋柿を食べたあとだったのでなおさらでしたね。
ただ、やはり食後は渋柿と同じように唾液腺が刺激されました。要するに唾がだらだら出たわけですね。渋柿を食べた時ほどではありませんでしたが、それでも少なからず刺激されました。梅干を食べた時といい勝負かな?


そんな感じで、木の実の話ばかりしてきました。今の子どもにも是非体験してもらいたいですねー。洗わずに丸齧りというのは少々よくないかもしれませんが、それでも木の実をもいで食べる楽しさは知ってもらいたい。
そこから何を学べるか、というのは子どもによって異なると思うんですよね。「柿って美味しい」でもいいし、「渋柿なんてもう食べたくない」でもいい。やっぱり「知る」きっかけにはなると思うし、そこから「知りたい」という気持ちに繋がると思います。


自然の形を知ることの大切さと面白さをあらためて実感しました。
ああ、田舎ってすばらしい。