いしいしんじ著『むぎふみクーツェ』を読んでます。
小説なのでしょうが、なんともふしぎな空気を醸し出している作品です。物語の端々に見られるあらゆる事象が、なにかを象徴しているように感じられてなりません。例えば「僕」の聞く、クーツェが麦を踏む音。物語中において、主人公である「僕」は、要所要所でクーツェという人物が「トン、タタン、トン」と麦を踏む音を聞きます。「麦ふみ」とはなんなのか、クーツェとは何者なのか、あの音はなんなのか、あらゆる疑問をそのままにして物語は展開していきます。
登場人物はみんなどこか変なのです。こと音楽になると猛烈苛烈になるおじいちゃん、数字狂いのお父さん、驚くほど背が高くクーツェの音を聞き取ることのできる「僕」。とにかく変てこな人々によってこの物語はつむがれているのですよ。
それでも、面白いです。夢の世界にいるような、そんなぼーっとした気持ちと浮遊感、そして不安感を味わえる作品でしょうね。と、知ったかぶって言ってみました(笑) そういうことは全部読み終えてから言えと。はい、その通りですね、頑張ります。